敏感肌向けスキンケアの基礎と最新研究

はじめに:敏感肌とは?

敏感肌とは、化粧品やパーソナルケア製品の使用に対して、通常よりも皮膚の耐性が低い状態を指す一般的な用語です 1。医学的な診断名ではありませんが、多くの人が経験しており、その症状は、通常では刺激を感じない程度の刺激に対しても、刺すような痛み、灼熱感、かゆみといった不快な感覚として現れます 2。これらの感覚に加えて、かゆみ(掻痒感)、チクチク感、ピリピリ感、皮膚のつっぱり感や乾燥を感じる人もいます 2。重症化すると、赤み、かゆみ、痛みを伴い、湿疹や皮膚炎といった皮膚疾患を引き起こす可能性もあります 5

2017年には、国際掻痒学会(International Forum for the Study of Itch: IFSI)の敏感肌特別委員会が、敏感肌を高反応性で低耐性の皮膚感覚症候群と定義しました。このような皮膚はアレルギーを起こしやすく、皮膚のバリア機能の損傷を反映しているとされています 5。IFSIはさらに、デルファイ法を用いて、敏感肌を「通常ではそのような感覚を引き起こさない刺激に対して、不快な感覚(刺すような痛み、灼熱感、痛み、掻痒感、チクチク感)が生じる症候群」と定義しました。これらの不快な感覚は、いかなる皮膚疾患に起因する病変によっても説明できず、皮膚は正常に見えることもあれば、紅斑を伴うこともあります。敏感肌は顔だけでなく、全身のあらゆる部位に影響を与える可能性があります 3

敏感肌の有病率は非常に高く、生活の質に大きな影響を与えることが研究で示されています 2。世界的な推定有病率は40%から70%の間とされています 8。2020年のメタアナリシスでは、一般成人人口における自己申告による何らかの程度の敏感肌の有病率は71%であり、中程度から非常に敏感な肌を持つ人の有病率は40%であることがわかりました 10。このメタアナリシスでは、男性と比較して女性の方が敏感肌を発症するリスクが高い傾向にあることも示されました(リスク比 = 1.741)10

敏感肌は、一般的な肌とは異なり、さまざまな内的および外的要因に対して過剰に反応します 5。これらの要因には、化粧品、環境条件(寒さ、暑さ、日光、汚染)、ストレス、さらには水などが含まれます 2。特定の化学物質に対する症状の発症閾値は、個人間で大きく異なります 1

敏感肌のメカニズム:最新の研究から

肌のバリア機能と敏感肌

敏感肌の発生における主要な仮説の一つは、角質層の透過性の亢進です。これにより、通常は皮膚に浸透しにくい物質が容易に侵入し、水分が失われやすくなります 2。角質層の厚さと皮膚の透過性の間には逆相関の関係があり、角質層が薄いほど皮膚は刺激を受けやすく、紅潮しやすくなります 2。バリア機能が低下すると、免疫細胞や敏感な神経が露出し、通常は無害な刺激に対しても過剰な皮膚反応が生じます 12

角質層に存在する主要な脂質であるセラミドのレベル低下も、敏感肌によく見られる特徴です。セラミドレベルの低下は、角質層の構造の乱れや脂質組成の不均衡を引き起こし、バリア機能をさらに損ない、水分蒸散量(TEWL)を増加させ、細菌に対する防御力を弱めます 5。アトピー性皮膚炎などの敏感肌を伴うことが多い疾患では、セラミドレベルの低下とTEWLの増加が関連していることが研究で示されています 5

経皮水分蒸散量(TEWL)の測定は、敏感肌の診断を補助するために用いられてきました。TEWLが高い人は、皮膚に接触する製品に対して不耐性を示す傾向があります 2。適切な皮膚の水分補給は、敏感肌の症状を改善します 2。ある研究では、TEWL脱離曲線を用いて、敏感肌と正常な肌の間で皮膚バリアの完全性に有意な差があることが示されました 5。しかし、生体物理学的方法に関するレビューでは、敏感肌の被験者のTEWLに関して相反する結果が見られ、一部の研究ではTEWLが高い、低い、または対照群と差がないという結果が出ています 17。興味深いことに、2015年の研究では、睡眠の質の高い人は睡眠の質の低い人に比べてTEWLが30%低いことが報告されており、睡眠とバリア機能の関連性が示唆されています 18

神経の過敏性と炎症

敏感肌は神経メカニズムと関連している可能性が高く、神経障害性の痛みやかゆみがその要因として考えられています 3。最近の研究では、敏感肌では表皮内神経線維の密度が、特に痛みやかゆみ、温度感覚に関与するペプチド作動性C線維において低下していることが示唆されています 3。この神経線維密度の低下は、通常は痛みを引き起こさない刺激によって痛みが生じるアロディニアのような症状を促進する可能性があります 19

敏感肌に見られる多様な感覚症状は、皮膚の神経の知覚機能不全を示唆しています 12。神経の変化には、神経終末の変化、神経伝達物質の放出増加、特異的な中枢情報処理、慢性的な神経終末の損傷、神経伝達物質の除去遅延などが含まれる可能性があります 12。機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いた研究では、自己申告による敏感肌の程度と、乳酸誘発性皮膚刺激試験に対する脳活動の変化との関連性が確立され、体性感覚皮質と前頭頭頂ネットワークの活動増加が示されました 12

熱受容体であるTRPV1は、表皮バリアの恒常性に関与しており、敏感肌のバリア機能に影響を与えます 5。一方、冷受容体であるTRPM8は、寒さによって誘発される敏感肌に関与しています 12

敏感肌は皮膚の免疫炎症メカニズムと関連している可能性があります 21。神経終末の活性化は、ケラチノサイト、肥満細胞、免疫細胞を活性化するニューロペプチドの放出につながり、炎症を引き起こす可能性があります 22。ストレスは皮膚の肥満細胞からの炎症性分子の放出を誘発し、感受性を高める可能性があります 23

敏感肌向けスキンケア:最新の研究トレンド

注目すべき成分

セラミド

セラミドは、皮膚に透過性バリアを形成する上で不可欠な脂質です 13。アトピー性皮膚炎(AD)のような敏感肌を伴うことが多い状態では、セラミドレベルの低下と組成の変化が見られます 13。セラミドを主体とするエモリエント剤は、皮膚バリア機能を改善する効果があり、ADの補助療法として承認されています 13。研究によると、湿疹や乾癬を持つ人はセラミドが少なく、乾燥肌やニキビができやすい肌もセラミドレベルが低いことが示されています。セラミドレベルは年齢とともに低下します 14。セラミドは水分を閉じ込め、不純物をブロックするのに役立ちます 14。スキンケア製品を選ぶ際には、セラミド1、3、6-IIが含まれているかを確認すると良いでしょう 14

ナイアシンアミド

ナイアシンアミドはビタミンB3の一種で、臨床試験では5%までの濃度で刺激性が報告されていません 24。抗炎症作用があり、炎症性ニキビの治療によく用いられます 24。また、皮膚バリア機能を助け、ニキビ、酒さ、皮膚炎からの回復を促し、皮膚の弾力性を高め、質を改善します 25。炎症や赤みを軽減し、皮膚炎や湿疹のある人のバリア機能を確立するのに役立ちます 25。皮膚の水分補給を増やし、死んだ皮膚細胞の剥離を助けます 25。研究では、色素産生細胞を抑制し、シミを薄くする効果も示されています 25。細胞間脂質の産生を促進することで皮膚バリアを改善し、おそらくセラミド合成を介して作用します 26。紫外線による影響を打ち消すのにも役立つ可能性があります 26。一般的に安全に使用でき、敏感肌の人でも使用できます。敏感肌の場合は、低濃度(例えば2%)から始めると良いでしょう 27

グリセリン

グリセリンは、皮膚の外層に水分を引き込む保湿剤の一種であるヒューメクタントです 28。皮膚の最上層の水分補給を高める上で最も効果的なヒューメクタントと考えられています 28。皮膚バリア機能を改善し、刺激物から保護する効果もあります 28。皮膚内部の水分を保持し、皮膚を滑らかで柔らかくします 29。べたつかず、毛穴を詰まらせにくいため、脂性肌や敏感肌にも適しています 29。グリセリン石鹸は、敏感肌の人によく推奨されます 28。皮膚のアクアポリン機能を高め、水分を外層に届けるのを助ける効果もあります 30

避けるべき成分

敏感肌向けの製品では、香料、着色料、刺激の強い化学物質などの一般的な刺激物を避けるべきです 32。SDアルコール、イソプロピルアルコール、変性アルコールなどの特定のアルコールは、皮膚を乾燥させ、炎症を引き起こす可能性があります。ただし、脂肪アルコールは一般的に問題ありません 23。防腐剤は、水分を含む製品の微生物増殖を防ぐために必要ですが、特定の種類に対して過敏な人もいます 3334の表1には、化粧品に含まれる可能性のあるさまざまな化学物質とその潜在的な健康への影響がリストされており、その多くが敏感肌を刺激する可能性があります。製品の成分リストを注意深く確認することが重要です 33

低刺激スキンケアの重要性

穏やかなクレンザーと保湿剤を継続して使用することは、乾燥した敏感肌を管理するための基本です 38。臨床試験では、穏やかなクレンザー(Dove Sensitive Skin®)とグリセリン豊富なローションを使用したスキンケアにより、皮膚の乾燥と生活の質の客観的および主観的指標に有意な改善が見られました 38。敏感肌向けに販売されている製品でも、一部の人には刺激となる成分が含まれている可能性があるため、注意が必要です 39。自然派やオーガニックの認証を受けた製品は、より純粋な成分プロファイルを持つ可能性があり、参考になるかもしれません 35

敏感肌に影響を与える外的要因

食生活と敏感肌

研究によると、食生活は炎症に影響を与え、それが敏感肌を悪化させる可能性があります 41。砂糖、加工食品、不健康な脂肪の多い食事は、炎症を促進する可能性があります 41。一方、果物、野菜、健康的な脂肪(オメガ3脂肪酸)、抗酸化物質が豊富な食事は、抗炎症作用があり、皮膚の健康をサポートする可能性があります 41。特定の食品が敏感肌の症状を引き起こす人もいるため、アレルギー検査が役立つ場合があります 42。バランスの取れた抗炎症食は、全体的な皮膚の健康に有益であると考えられます 41

睡眠と肌の健康

十分な睡眠は皮膚の修復と再生に不可欠です。睡眠不足は炎症を増加させ、皮膚バリア機能を損ない、敏感肌を悪化させる可能性があります 18。ある研究では、睡眠の質の高い人は睡眠の質の低い人に比べて皮膚バリア機能(TEWL)が優れていることがわかりました 18。アトピー性皮膚炎など、敏感肌と関連する状態は睡眠を妨げることが知られており、悪循環が生じる可能性があります 46。良好な睡眠習慣を優先することは、敏感肌の管理において重要です 18

紫外線対策

敏感肌は紫外線による刺激を受けやすい場合があります 47。広範囲スペクトルでSPF30以上の日焼け止めを毎日使用することは、UVAとUVBの両方の光線から保護し、さらなる損傷や刺激を防ぐために不可欠です 48。ミネラルベースの日焼け止め(酸化亜鉛や酸化チタンを含む)は、一般的に化学フィルターよりも刺激が少ないため、敏感肌によく推奨されます 47。一貫した適切な紫外線対策は、敏感肌の症状悪化と長期的な損傷を防ぐために非常に重要です 47

まとめ:敏感肌と上手く付き合うために

最新の研究は、敏感肌の定義、メカニズム、影響要因について多くの洞察を提供しています。敏感肌の管理には、穏やかなスキンケア、トリガーの特定と回避、健康的なライフスタイル(食事と睡眠)、そして一貫した紫外線対策を含む、全体的なアプローチが重要です。セラミド、ナイアシンアミド、グリセリンなどの成分を含む製品を探し、一般的な刺激物を避けることが推奨されます。個別のニーズに合わせて、皮膚科医に相談することも有効です。

参考文献